type-A
先日コンビニで、お金を払いにレジに向かい、レジ係の女の子の前に立ってものを並べた。するとそのコは僕に向かってこちらへどうぞと隣の空いたレジへ導く仕草をした。
「あ…」
と、僕は特に深く考えず、ものを置いたまま隣のレジへ移動した。ものを置いたまま移動したのは、すでにお勘定の計算が始まっていたからだ。
言われたとおり隣のレジで僕は待っていたのだが、ふと空気がおかしいのに気づいた。レジ係のコは固まっているし、そのレジの前には別の客がいる。
お気づきだろうか。
レジ係の女の子は、僕ではなく僕の後ろに並んだお客に対して声をかけたのだった。そうとは知らず、僕はヨーグルトとコーヒーを残したままわざわざ隣のレジでお勘定を待っているのである。なんと健気なことをしてるんだろう。
「あ…」
と、僕は自分の勘違いに気づいてもとの場所に戻った。自慢するが僕はこの程度のことで動じない。その辺の肝っ玉は据わっているほうなのだ。
ただ、レジ係の女の子はそうはいかなかった。突然降って沸いたアホに虚をつかれ、内側で笑いの衝動が嵐のように渦巻いているようだった。
「ごふフ…、563えクフフ…、にひなりまゥクッ…、ふぬ!あります、ウフフフフフ…。」
分かるぞ、その気持ち。持ちこたえろ。笑いたいけど笑ってはいけないってきっとすっごくつらいよな?今何とか体裁を保とうと口走った内容も無残なことになってるし、いたたまれないよな?でも、ここは俺的には思いっきり笑ってくれた方が楽なんだぜ?
(ごめんよベイビー…。)
僕はとくにこれといった感動も見せずその場を立ち去ったが、あのコは今日一日この衝動と戦わねばならないと考えたら申し訳ない気がした。きっと、どんな指示やねん、あたし一体どんな指示だした事にされてんねんとか突っ込みつつ、思い出し笑いしまくったに違いない。
(悪気はなかったんだ…。)*1
*1:一応念押ししますが、これは実話です