private-public

CSS の display プロパティに inline-block という属性値がある

その前提に blockinline があって block は塊同士の配置、inline は文字列内の配置と、 それぞれスタイルの趣向が異なる。

しかしながら、インライン要素であろうとブロック要素のように、 周囲の要素から距離をとって読みやすく強調したいこともある。

という都合から、inline-block という便利な中間属性が用意されている。 これがなかったなら窮屈で多くの人が不幸になってしまう、というくらい重要なものである。

Private か Public か

ウェブ上にはさまざまなコンテンツが公開されているが、すべて Public 属性を持たされているように思う。 公開した以上、公開した人に発信責任があるだろう、と判断される。

そうした責任を抱えたくなければ、Private にしておくこと。 つまり、非公開ストレージに保存して自分だけが閲覧できるようにする。

このシチュエーションには blockinline か一方しか選べない類の不幸がある。

インターネットには集合知の便益がある。 少なからぬアイデアが原石となって別の何かのヒントになり、 多くの利用者が連鎖的にそれらを用いていくことで、もっと有意義な何かが磨き上げられていく。

Publish にこうした公益性があるにもかかわらず、 内容が不適当だと判定されるや否や、発信者はつるし上げられ、さらし者にされてしまう。

例えば、有名人は SNS で軽口を叩くと即キャンセルされてしまう。 居酒屋で多少の毒も吐いてしまうのが人間だが、そこには真実が含まれていることだってあり、 ある程度は許されるのがリアルな社会である。

そういう発言をも拾う気満々の SNS において、 うっかり毒を吐いてしまったが最後、あなたの将来はロードローラーで均されて白紙となる。 SNS 事業者が得ている超絶利益を考えると利用者が一方的に不利過ぎないだろうか?

そこで、private-public のような属性を ウェブ上のコンテンツに持たせられないだろうかと考えてみた。

MIT ライセンス

イデアのひな型としてこれを使う。

MIT ライセンス(Wikipedia)はソフトウェアのライセンスである。

今回着目するポイントは、
公開されたソフトウェアは無料で自由に使ってよいし、
それによって得た収益を公開者に還元しなくてよいが、
使用で生じた不利益の責任を公開者に押し付けない、
という部分である。

のびのびとした発想で楽しみながらソフトウェア開発に専念できるよう、 開発者を保護することが念頭にある点が素敵である。

これをヒントに private-public を定義してみよう。

private-public

private-public コンテンツの公開者は次の条件を飲む:

  • コンテンツの公開によって収益を得ない
  • そのコンテンツで他者が得た利益に関知しない

private-public コンテンツの公開者は次の免責を得る:

  • 内容が不適切だとしても心証がちょっと悪くなる以上の不利益を被らない
  • 一義的におおやけの立場ではなく私的な発信と解釈される

private-public コンテンツの「利用者」は次の責任を負う:

  • リンクや引用は推奨されないコンテンツであることを踏まえる
  • 引用した場合、引用者の責任において引用者がその内容を発信したものとされる

SNS やブログサイト運営者は private-public な発信の条件を提供する特殊な立場とする。 彼らが発信責任を負う必要はない(そうしないと今度は彼らが窮屈になってしまうから)。 著しい誹謗中傷や風説の流布は法律に基づき許容されず、従来通り BAN するなりの対処が適切である。

private-public なコンテンツの引用は引用者自身の発信になるということで、 切り抜き投稿者や報道関係者やリンクを貼る者は気をつけなくてはいけない。 面白がってつるし上げようとすれば主犯者または盗撮者になってしまうから。

締め

例えば実名の投稿に private-public のようなラベルをくっつけることで、 居酒屋の会話だよという体で、実質的に気楽なオフモードでツイートしたり動画配信したりできるようになればどうか。

このアイデアはインターネットの便益を皆がよりスムーズに享受できる状況を支持する上で効果を発揮するが、 これを隠れ蓑にして誰かに不利益を与えてやろうとか考えた瞬間、雲散霧消して現状のウェブに戻ってしまう点には注意する。