8ビートの伝達力

伝達力が強い

これまでに出くわしたものの中で、個人的にも良いな、面白いなと感じつつ、
しかも並々ならぬ人気があるものに、「8ビート」という共通点がありそう、という話。

これは作品とか商品を作るときに視聴者やユーザーに受け入れられやすい黄金律なのではと思っている。

8ビート

ジョギングなど軽いスポーツの時の心臓の鼓動、
多くの人に手が届き、軽い負荷があって、習慣的にも続けられるイメージ。
音楽でいうと心地よく揺さぶられる感覚を生じるリズム。共有感覚。
個人的に能ある鷹が爪を隠しているイメージもある。

一方、比較対象として16ビートを考えると、
全力疾走とか無酸素運動、気持ちがはやる、急き立てられる、
超絶技巧、ぶっちぎりで置いてかれる、エリート志向、孤高というイメージ。

8ビートなモノたち

適当に列挙してみる

  • ダウンタウンの漫才

    • 「8ビート」の元ネタ(テレビ番組「松紳」だったかな)
    • 当時、漫才が16ビートな時代に、ダウンタウンは8ビートで勝負したという
    • ぽつりぽつりと放り込む一ボケ一ボケがバズーカ級の破壊力
  • biim 氏の RTA 動画

    • どんな複雑な状況も2行の吹き出しでスマートに要約(上限)
    • 単調なシーンは禁断の早送りをぶっこんで情報量を調節(下限)
    • 画だけで観ても面白い、音だけで聴いても面白い構成
  • 村上春樹の小説

    • 平易なライトノベル調文体で多くの読者を誘い込む
    • しかしそれは異常に発達したメタファによる擬装にすぎない
    • 気がつくと放射性金属のような重苦しい何かを飲み込まされている
  • ポップス

    • 限られたフレーズと曲と歌声が協調して印象的なシーンを描く
    • 繰り返し聴いても耳に障らず琴線をかき鳴らされる
  • マンガのコマ割り

    • 1コマで0.1秒から10秒くらいまでの時間感覚を自在に操る
    • コマとコマの繋がりでカメラワークや心理まで描き分ける
  • 黎明期のコンソールゲームとコントローラ

    • カセット差してスイッチオンで画面に導かれ幼児までも楽しめる
    • 十字キーとABボタンだけで遊べるデザイン
  • iPhone*1

    • 見えてるオブジェクトは指で直接さわって操作できるオブジェクト
    • 操作の限界も伸び縮みで画面が反応し続ける

何が含まれているのか

ポイントは「折りたたむ」であるような気がする。
時間的なアウフヘーベンというか。

伝えたいあれやこれやは沢山あってキリが無いのに、 視聴者やユーザーはそんなに沢山受け取れない、という問題がある。

だから刹那の一時点に、あれやこれやを巧みに1つに折りたたんで提示する。
一見情報量は少なく感じられる。

結果、マイペースな、近寄りやすそうな、親しみやすそうな雰囲気になる。
それでいてすごく面白い、濃い体験ができる、という効果を生じる。

良く知らないけど、テレビ業界の人たちはこれに極めて敏感という気がしている。 (そのためズバ抜けて巧みな biim 氏は元テレビマンではと勘繰っている)

他にも、 最近のPCモニタは毎秒120フレームで現実と見紛うヌルヌル描画になっているが、 映画はずっと昔からカクカクの毎秒24フレームしかなくて、 それでもスターウォーズとか迫力ある超高速シーンを描き出している。

それはモーションブラー効果というやつで1フレームに沢山の動作フレームが凝縮されているから。

とりとめないが、いろんなところに「折りたたみ」が埋め込まれていて、モノづくりのヒントになっている。

*1:スマートフォンiPhone 以前と iPhone 以後の二種類だと思っている